昔、このあたりの山野を、身の丈一丈(三メートル)もある怪物が、たたらを踏むようにしてかけ回ったという。一つ目で、口は耳まで裂けた、見るからに恐ろしい顔。しかも一本足。人々は、その足音を聞くと「一本だたらや」「猪笹王の亡霊だ」といって、ふるえたとも。
続きを読む鼻そげ地蔵 ~本宮町(現田辺市本宮町)湯峰~
いわゆる「身代り地蔵」話のひとつ。温泉谷の尾根を登った峠に、自然石に刻んだ二体の地蔵があり、左甚五郎にからんだ話が、いまなお語りつがれている。
続きを読む瀞の主 ~熊野川町(現新宮市熊野川町)玉置ロ~
瀞は三重、奈良、和歌山の三県境を流れる。あるいは深くよどみ、あるいは急流が岩をかむ。この話は、そんな神秘さをただよわせる瀞にはいかにもふさわしい。
続きを読むいくさ地蔵 ~古座川町添野川~
添野川の村はずれ、小川のほとりに、お地蔵さんをまつった小さな祠がある。太平洋戦争中は全国各地からお参りが続き、近くの人が「弾よけの護符」を出し、祭煙の絶えることがなかったが、平和ないまは、合格析願の学生や地元のわずかな信者がお参りするだけ。
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