生石高原の麓から

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権八地蔵~すさみ町江須ノ川~

 明治の初年、すさみ町里野の東海岸にある大きな洞窟に、三人の親子が住んでいた。父親は伝次、母親はたま、男の子はたまの連れ子で権八といい、毎日、門づけに歩いた。

 

 ところが、たまが死んだことから、母を慕う権八に手を焼いた伝次が、釣りにことよせて江須之川の断崖から海へ突き落としたといい、以来この場所を「継子殺し」と呼ぶようになった。また、この事件のあと、洞窟のそばにすんでいた大蛇が急に姿を消し、行方がわからなくなったとも。そこで人々は、その前の島を大蛇岩と呼んだという。

 

 哀れな権八の供養に、と地元の人たちが昭和49年7月、近くに「権八地蔵」を建立した。県立江住海岸公園の一角でもあるそこは、天然記念物・江須崎に近く、枯木灘海岸きっての絶景の地。

 

(メモ:国鉄紀勢線江住駅から歩いて約30分、車の方が使利で、国道42号線で「江住県立海岸公園」の標示の場所を海側へ入るとすぐ。)

 

※「門づけ(かどづけ)」とは、家々を回って門前で歌や踊りなどの芸を見せ、金品を乞うこと。
※「県立江住海岸公園」は現在「日本童謡の園」として整備がなされている。これは、童謡「お花がわらった」「大きな古時計」などを作詞(大きな古時計は訳詞)した保富康午(ほとみ こうご)がすさみ町出身であったことや、「まりと殿様(紀州の殿様の歌)」、「鳩ぽっぽ(新宮市出身の東くめ作詞)」など紀州ゆかりの著名な童謡があることを踏まえて、すさみ町がまちおこしのため昭和62年度に整備したもの。園内には「まりと殿様」「鳩ぽっぽ」「お花が笑った」のモニュメントに加え、代表的な童謡7曲(「赤とんぼ」「七つの子」「みかんの花咲く丘」「めだかの学校」「うみ」「てるてる坊主」「夕焼け小焼け」)の歌碑が建立されている。公園からは吉野熊野国立公園の一角である枯木灘海岸の眺望が楽しめ、「和歌山県朝日夕陽百選」にも選ばれているほか、「江須崎暖地性植物群落」として国の天然記念物に指定されている江須崎島へも渡ることができる。
※平成11年(1999)に公園内の遊休施設を利用して「すさみ町立エビとカニの水族館」が設けられていたが、高速道路の開通に伴い平成27年(2015)に「道の駅すさみ」へ移転した。
保富康午は、童謡よりもむしろTVアニメ主題歌の作詞で知られており、「ドカベン」「宇宙海賊キャプテンハーロック」「おれは鉄兵」「UFOロボ グレンダイザー」「ラ・セーヌの星」「サザエさん(再放送版)」などが代表作。
※「権八地蔵」の正式名称は「延命地蔵」といい、次のような由来が掲げられている。
~抑々(そもそも)昔の江住村と和深村の境界の磯にある洞窟を根城に住んでいた傳次が権八と言ふ子を連れた母たまと同棲していた。たまの死後、権八が十歳位の時、母を慕い日夜泣き叫ぶので、傳次は権八を釣に連れていくふりをして此の崖から突き落して死なせた。所謂まゝ子殺しとして伝わっている此處へ、哀れな権八の供養に建てたお地蔵さんである。南無阿弥陀仏 昭和四十九年七月二十四日建立 老人クラブ仲よし会~
※「すさみ町」はもともと「周参見」と表記されていたが、昭和30年(1955)に大都河村・佐本村と合併したことを契機にひらがな表記に変更。名称の由来は、「荒(すさ)ぶ海」が転じたものとされる。


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本ページの内容は、昭和57年に和歌山県が発行した「紀州 民話の旅」を復刻し、必要に応じ注釈(※印)を加えたものです。注釈のない場合でも、道路改修や施設整備等により記載内容が現状と大きく異なっている場合がありますので、ご注意ください。