「イベント回顧録」のカテゴリーでは過去の個人サイトに載せていたイベントの記録などを再掲しています。
今回は平成13年(2001)11月に行われた生石高原の「すすき大刈り取り会」の告知を掲載します。
当時、生石高原の山上に広がるすすき草原は、和歌山県が平成9年(1997)に提唱した「ネイチャーフレンドシップ運動」のひとつのシンボルとして位置づけられており、その保全と再生に大きな注目が集まっていました。
こうした中で地元住民や自然環境の保全を志す人々が中心となって、この年に「生石山の大草原保存会」が結成されて、すすき草原の維持管理や観光客への啓発活動などを行っていくことになりました。
※「大草原保存会」については別項「生石高原山開き&緑の感謝祭(2001. 4.29) - 生石高原の麓から」の後段をご参照ください。
生石高原山頂付近に見られるすすき草原は、もともと自然に存在していたものではなく、かつてこの地域で暮らす人々が資源(家畜の飼料、田畑の肥料、屋根などの材料)としての草類(すすき、茅など)が必要であったため、森林を切り拓いて徐々に草原へと移行させてきたものなのです。このため、生活の近代化に伴って資源としての草類の必要性が低下していくと草類を刈り取ることもなくなり、草類と同時に刈り取られるはずだった樹木の芽が徐々に大きくなりはじめて、数年~数十年の間に草原は森林へと変化していくのです。
これを防止し、草原を維持するためには昔のように毎年刈り取り作業が行われなけれればなりません。また、生石高原では、かつて、草原を維持するために「山焼き」が定期的に行われていたとの伝承もあるのですが、これも樹木がある状態で行うと「山火事」になってしまう恐れが非常に強いので、まずはすすきとともに灌木類を刈り取り、翌年に向けてきれいなすすきの芽吹きを促進する必要があるのです。
※草原の維持管理と「山焼き」については、下記リンク先の津田智氏(岐阜大学流域圏科学研究センター 当時)による講演資料「草原の環境を守る「火入れ」の秘密」に詳しいので、興味のある方はこちらを参照ください。 埼玉県生態系保護協会サイエンストーク
今回募集告知を掲載した「すすき大刈り取り会」は、このすすき草原を維持するために必要な作業を行うためのボランティアを募集するものです。これ以前にも、行政の関係者によって3回の刈り取り作業が行われてきましたが、これによって概ねノウハウが確立し、一般のボランティアの方々に参加していただいても作業の安全性が確保できる見通しがたったことから、今回の募集に至ったものです。
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生石高原
その自然の素晴らしさとそこに生きる植物・昆虫・鳥類・動物や、その歴史文化などすべてを、次の世代に、残し伝えるため<生石山の大草原保存会>は、発足しました。
会では、その中心的な活動として、[すすき草地]の保全・育成のため[すすきの大刈り取り]を実施します。
この刈り取りは、県や関係一市四町を中心に、これまで3回にわたり続けられてきたもので、それを引き継ぐものです。
趣旨に賛同し、同[すすき刈り取り]作業をするボランティアを、下記の要領で募集します。([すすき草地]は、放置されると、樹林化して行きます。)
◆開催日 /平成13年11月18日(日)
※雨天の場合は11月25日(日)
◆集合場所 /生石山頂、野上町立<山の家おいし>前
◆集合時間 /午後12時30分
(昼食は各自済ませてきてください)
◆終了時間 /午後4時30分(予定)
◆内 容 /カマによる、すすきの刈り取り作業
(カマをお持ちの方は、ご持参ください)
●参加ご希望の方は、参加申込書に必要事項を記入の上、下記まで郵送又はファックスにて申込ください。
[生石山の大草原保存会]
(以下略)
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上記で紹介した津田智氏の講演資料によれば、草原の維持管理方法として「野焼き(山焼き)」、「草刈り」、「放牧」を比較した場合、「野焼き」は「草刈り」と比較して危険度は高いものの、労力やコスト、環境面への影響などの面では有利であるとされています。
刈り取り草原 | 野焼き草原 | 放牧地 | 放棄草原 | |
仕事量 | 大 | 小 | 小 | 無し |
コスト(種類) | 大 (草刈り・運び出し) |
小 (防火帯切り・火入れ) |
大 (放牧) |
無し |
実施時期 | たいてい夏 | たいてい春 | 春から秋 | - |
攪乱の強度 | 中 | 小 | 大 | - |
枯れ草の蓄積 | 少 | ほとんど無し | 少 | 多 |
危険度 | 少 | 大 | 少 | 無し |
生石高原でも、同様の考え方に基づき、平成15年から「山焼き」を開始していますが、この経緯についても「イベント回顧録」の中でおいおい紹介していく予定としています。