生石高原の麓から

和歌山の歴史・文化・伝承などを気ままに書き連ねています

生石高原防火水槽への注水(2003.3.9)

 「イベント回顧録」のカテゴリーでは過去の個人サイトに載せていたイベントの記録などを再掲しています。

 

 今回は、前回の記事で紹介した「生石高原の山焼き」の実施に向けて、その安全対策として設置工事が進められていた防火水槽のひとつが完成し、その注水作業が実施されたという記事です。

「生石高原の山焼き」に至る経過と今後の計画(2003.1.31) - 生石高原の麓から

 「山焼き」の意義や経緯については前回の記事などで既に解説を行っているところですが、その実現を阻んでいたのは、「山焼きによって大規模な山林火災を誘発するのではないか」という重大な懸念でした。

 これに対し、地元町では、近隣で古くから大規模な山焼きを行ってきた地域徳島県:塩塚高原、奈良県:曽爾高原など)に関係者を派遣して具体的な安全確保の方法を教わったり、全国各地の山焼きに関する資料を調査したりして研究を続けてきました。その結果、適切な計画に基づいて行えば十分に安全が確保できるという目処がたったため、山焼きが実現できるようになったのです(詳細は後述)

 ただし、それでも万が一の場合には迅速に消火活動が行えるよう、山上に防火水槽を設置することとし、その事業費については和歌山県が一部を補助する仕組みがつくられました。これにより、生石高原の山頂には合計300トン規模の防火水槽が建設されることになったのですが、今回はそのうち2基(計100トン)が先行して完成したため、はじめての注水作業が行われることになったものです。

 

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生石高原防火水槽 水入れ

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 3月とはいえ、寒の戻りで厳しい寒さとなった3月9日、生石高原の山焼きを目的として設置された防火水槽に水を入れるための作業が行われました。

 

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 今回の作業は、野上美里消防組合、有田消防組合、野上町消防団、金屋町消防団の4者が協力し、100名以上の参加者が集まって実施されました。消防組合だけでなく、消防団も協力して野上町・金屋町の共同作業が実施されるのは初めてのことだそうです。

 

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 打ち合わせを終え、続々と持ち場へ出動する消防車。単なる水入れとはいえ、標高差100m以上、距離にして2Km近くにわたって約100トンの水を汲み上げる予定のため、消防車両や可搬式消防ポンプも多数参加しました。

 

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 防火水槽の水源となったのは、生石高原山頂近くの別荘地に作られたプールです。もともと、万一の林野火災の際にはこのプールから水を引き上げて消火に使う予定だったそうですが、実際にこのプールから山頂まで水が汲み上げられるのは初めてのことです。

 

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 こちらは可搬式消防ポンプにより水を中継しているところです。ポンプ1台ではせいぜい200m程度しか水を送ることができないため、今回は十数台のポンプを途中に設置し、順々に中継することによって送水することになっています。

 

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 防火水槽にホースを入れて水を送り込んでいるところ。
 この水槽は全部で50トンの水が入れられるようになっています。同じ大きさの水槽がもう一か所あり、この日は合計100トンの水が入れられる予定です。
 しかし、多くの中継ポンプを利用しているため、なかなか思ったほどの水圧が得られず、送水にはかなりの時間がかかっているようでした。私は途中で失礼したので最終結果は知らないんですが、無事に100トンの送水は終了したのでしょうか?

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 上記で紹介した山焼きの安全対策について、その具体的な内容は多岐にわたるのですが、ごくおおまかに言えば、次のような事柄であると言えます。

  • 山焼きの範囲内に樹木がなければ「飛び火」はほぼ防げるため、必ず樹木はあらかじめ除去しておく(草は火がついたまま遠くへ飛ばされても飛行中にほぼ火が消えるが、樹木に火がついたまま飛ばされると「炭」になって新たな火種となりやすい)
  • 山焼きを行う外周に沿って一定の「防火帯(数メートルの範囲であらかじめ草を刈り取っておく)」を設け、火を放つ際には防火帯から内側に向かって燃え広がるようにする
  • 天候に十分注意し、雨天を避けることはもちろん、強風が懸念される場合は絶対に火を放たない

 他の地域ではこうしたノウハウによりほぼ範囲外の延焼は防げているのですが、それでもしばしば延焼が発生したり、時には死亡につながる事故も発生しています。
野焼き|ワードBOX|【西日本新聞me】

 このため、生石高原では山上に大規模な防火水槽を設置し、延焼が発生してもすぐに消火できる体制を整えるとともに、山焼き終了後にはすぐに散水することで「残り火」が生じないような対策を講じることとしたものです。

 幸いなことに、これまで生石高原では重大な事故や延焼はおきていないようですが、もし万万が一にも事故が発生してしまうと山焼き自体の存続すら難しくなると思いますので、関係者の方々にはくれぐれも安全確保に全力を注いでいただけますようお願いいたします。