生石高原の麓から

和歌山の歴史・文化・伝承などを気ままに書き連ねています

平成15年 すすき大刈り取り会 (2003.11.23)

 「イベント回顧録」のカテゴリーでは過去の個人サイトに載せていたイベントの記録などを再掲しています。

 

 今回は平成15年(2003)11月に行われた生石高原の「すすき大刈り取り会」の様子を紹介した記事です。

 これまでに何回も紹介していますが、生石高原では平成9年(1997)に和歌山県が提唱した「ネイチャーフレンドシップ運動」をきっかけに大規模なすすき草原の維持・再生活動が盛んになり、その活動の中核を担う団体として平成13年(2001)にはボランティア団体(現在はNPO法人生石山の大草原保存会」が結成されました。

 さらに、地元の野上町(当時:現在は紀美野町金屋町(当時:現在は有田川町が県の支援を得て防火水槽の設置を決定し、安全確保の目処がたったことから、平成16年(2004)春にはすすき草原の維持・再生を主目的とした「山焼き」を実施することとなりました。

 

 今回紹介する「すすき大刈り取り大会」は、こうした状況のもとで、翌春に迫った「山焼き」の準備を念頭に置いたものとなりました。

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平成15年 すすき大刈り取り会

 

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 勤労感謝の日の11月23日、生石高原では恒例となったすすきの大刈り取り会が開催されました。
 もともとは県主催で始められた行事ですが、3年前から活動主体を「生石山の大草原保存会」に移し、ボランティアによって運営されるようになりました。昨年は同保存会がNPO法人の資格を取得し、継続的な活動の基盤が構築されたほか、地元町の尽力によりすすき草原の復元を目的とした「山焼き」が復活するなど、この「刈り取り会」はますます大きな広がりをもって進められています。

 

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 この日の参加者は約200人。
 保存会のメンバーから刈り取り区域の説明を受けます。来年3月には約3ヘクタールの規模で山焼きを実施する予定になっていることから、山焼きの際の万一の延焼を未然に防げるように防火帯を設けることがこの日の作業の主目的でした。

 

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 手作業による刈り取り風景。
 ここの主役は地元野上町金屋町の小学生とその保護者たちでした。田舎とはいえ、小学生の子どもたちが鎌を手に草刈りをするというのは今や貴重な体験です。この日は最低気温が1.4度と非常に厳しい寒さでしたが、一生懸命に刈り取りを行っているうちに寒さはどこかへ飛んでいってしまったようです。

 

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 刈り取ったすすきの一部は、軽トラックに積み込んで運び出します。
 もともと、生石高原のすすきは、茅葺き屋根の材料家畜の飼料として使用されてきたのですが、近年はこうした利用がされなくなってしまったことにより定期的な刈り取りが行われず、それがすすき草原の衰退に結びついたのです。
 ところが、最近はまた有機農法が注目を集めていることから、堆肥の原料マルチ(雑草を防ぐために畑の表面にすすきなどを敷き詰める)の材料としてすすきが利用されるようになってきました。まだまだ利用規模は小さいものの、こうした利用が広がれば自然環境の保全と自然に優しい農業のコラボレーションとしてユニークな取り組みになるかもしれません。

 

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 こちらは草刈機による刈り取り風景です。
 ここでの主役は、地元の自治会や役場の職員、それから町議会議員の有志などでした。それぞれ何らかの形で農業に従事している人たちばかりですので、皆、慣れた手つきで広範囲のすすきをまたたく間に刈り取っていきました。

 

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 機械化部隊の活躍により、当初の予定より早く、午前中には大半の刈り取り作業が終了しました。
 刈り残したすすきは、来年の3月に「山焼き」を開催し、焼き払う予定となっています。今年の3月にも山焼きは実施されたのですが、これはあくまでも「試行」として行われたもので、規模的にも約3,000平方メートルと小規模なものでした。
 来年は、一気にその規模を十倍にして約3ヘクタールの範囲を焼くということですので、イベントとしてもかなり見応えのあるものになると思います。
 ところで、山焼きの見学はできるのかな? もしかしたら安全確保のために一般の見学者は近寄らせてくれないかもしれませんね。

 

※すすき刈り取り会や生石高原の自然環境保全に関するお問い合わせは紀美野町役場(TEL:073-489-2430)へ。

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 令和3年(2021)現在、山焼きが概ね定着したことによりすすき草原内の樹木は一掃されており、燃えた樹木が炭となって遠くまで飛んで新たな火種になるという懸念が薄れたことから、山焼き前のすすき刈り取り作業はほぼ防火帯を作る目的に限定されており、大規模にボランティアを募集してイベント的に刈り取り会が行われることはなくなっています。

 

 こうした中、地元の国立和歌山大学が新たに設けた「わかやま未来学副専攻」というカリキュラムにおいて、平成28年(2016)から「和歌山大学 むすび屋弥右ヱ門茅葺き(やうえもん かやぶき)プロジェクト」が開始されました。

musubiya-yauemon.studio.site

 これは、和歌山県かつらぎ町志賀地区にある古い茅葺(かやぶき)屋根の集落(現在はその多くがトタン屋根となっている)を復活させようとするプロジェクトですが、令和元年(2019)からその茅葺屋根の材料として生石高原のすすきの刈り取りを行っています。

 また、このプロジェクトでは令和3年(2021)に「生石高原のススキ・茅場(かやば)を持続可能なものにするため、茅刈りイベントを開催したい!! 和歌山大学弥右エ門PJ」という名称でクラウドファンディングを実施し、約37万円の支援を受けて事業を終了しました。この事業の内容については、下記のサイトでご覧になることができます。ここでも茅場(かやば)としての生石高原の歴史などが紹介されていますので、時間があればこちらもあわせてご覧ください。

motion-gallery.net