「南紀熊野体験博の記録」のカテゴリーでは、過去の個人サイトに掲載していた記事のうち、「JAPAN EXPO 南紀熊野体験博(1999.4月~9月)」に関するものを再掲していきます。
今回の記事では、南紀熊野体験博の実施計画について紹介しています。この計画は、和歌山県・県内市町村及び県内の各種団体等を構成員として平成9年(1997)4月に設立された「南紀熊野体験博実行委員会」によって決定されたもので、同年5月に策定された「基本計画」をもとにして、これをより現実的なイベント計画へと落とし込んだものになっています。
また、この実施計画には体験博の中核となるイベントや「シンボルパーク(田辺新庄、那智勝浦)」のイメージパースも盛り込まれており、これまでは理念が先行していた感のあった南紀熊野体験博が、ここへ来てようやく具体的な姿を現しはじめたと言えるでしょう。

1997年10月、南紀熊野体験博実行委員会において、実施計画案が承認されました。
南紀熊野体験博 実施計画
1 開催概要
A 名称
ジャパンエキスポ 南紀熊野体験博 リゾートピアわかやま'99
B 基本テーマ
「こころにリゾート実感」
C サブテーマ
1 いやす・・・・・こころを癒す
2 みたす・・・・・こころを充たす
3 よみがえる・・・こころが蘇る
D 開催期間
平成11年(1999年)4月29日(祝)から9月19日(日)までの144日間
E 開催地域
1 直接対象地域
和歌山県・南紀熊野地域
田辺市/[西牟婁郡]白浜町/中辺路町/大塔村/上富田町/日置川町/すさみ町/串本町
新宮市/[東牟婁郡]那智勝浦町/太地町/古座町/古座川町/熊野川町/本宮町/北山村
2 関連広域地域
和歌山県・紀中地域/和歌山県・紀北地域、奈良県関連地域、三重県関連地域
F 目標動員数
200万人(南紀熊野体験博参加者延べ人数)
G 主催
南紀熊野体験博実行委員会
2 基本理念
「ジャパンエキスポ 南紀熊野体験博 リゾートピアわかやま'99」は、ほんものの「わかやまリゾート」によって、“こころのリゾート実感”を追求する。
3 開催の意義と目的
A 情報発信
新しいリゾートのフロンティア(開拓地)として国内外への情報発信
B 魅力創出
豊かな自然・歴史・文化等を活かした地域資源の再発見と新たな魅力の創出
4 会場概念
南紀熊野地域全体が会場である。
5 博覧会の基本方針
A 基本方針
1 イベントの広域・複合展開(非囲い込み型オープンエリア展開)
2 住民主導を基本とする
3 統一的構成をとる
B 基本的な構成と展開
- プレイベント(平成10年度)
- イベント展開
- テーマイベントの展開
10万人の熊野詣
黒潮マリンスポーツフェスティバル
和歌山国際ジャンボリー - リゾート体験イベントの展開
- 地域ネットワークイベントの展開
- シンボルパークの展開
田辺新庄シンボルパーク
那智勝浦シンボルパーク - シンボル空間の展開
6 イベント展開
A テーマイベント
1 10万人の熊野詣

a)実施期間:全期間
b)実施場所:熊野古道一帯、特に中辺路~本宮~那智勝浦
c)内 容:
(1)実施エリア及び実施日を限定した「平成・蟻の熊野詣」
(a)実施日:土日祝祭日を中心に
(b)企画案
・往時の衣装を身に纏った時代行列熊野詣
・熊野古道の歴史専門家によるガイド付き熊野詣 etc.
(2)広域及び長期間にわたって展開する「10万人の熊野詣」
(a)実施時期:全期間を通じて
(b)企画案
・「10万人の熊野詣」スタンプラリー
・環境保護や環境整備を目的としたチャリティ etc.
2 黒潮マリンスポーツフェスティバル

a)実施期間:全期間を通じて
b)実施場所:南紀熊野地域の海岸部一帯
c)内 容
(1)一般参加体験プログラム
(2)愛好者参加型競技会
(3)専門家大規模競技会
3 和歌山国際ジャンボリー
a)実施期間:4日間で1クールとし、夏休み期間中に合計3クール行う
b)実施場所:串本町潮岬を中心に展開
c)内 容
(1)参加者募集:広く一般参加を募る
(2)展開プログラム:文化系、スポーツ系プログラムから構成する。
(3)参加者の宿泊:周辺エリアでキャンプ等を展開する。
B リゾート体験イベント
1 リゾート体験イベント
南紀熊野地域で、短期滞在型(1~2泊程度)のリゾート体験イベントを実施する。
a)リゾート体験イベントの基本プログラム案
(1)特別プログラム:「外湯めぐり」
(2)ウォーク・プログラム:「重畳山・あらふね海岸ウォーク」
(3)スポーツ・プログラム:「海と遊ぼう」
(4)セミナー・プログラム:「くじらの町を訪ねて」
(5)フード・プログラム:「海山味わい田辺ツアー」 など
2 リゾート探訪コース
観光地や名所旧跡、特別な景観等をガイドマップ等で紹介し、来訪を促進する。
C 地域ネットワークイベント
1 イベント展開
様々な既存イベントをベースとして、各地域の特性や季節、会場等の諸条件にあった新規企画のイベントを展開し、博覧会のテーマ性を具体的に表現する。
2 内容(例)
「上富田フラワーフェスティバル」
「清姫の墓、音の居ライトアップ」
「北山川ラフティング」
D シンボルパークのイベント
1 イベントの集中実施期間および時間
a)イベントの集中実施期間
(1)開幕からゴールデンウィーク期間:
平成11年4月29日(祝)から5月9日(日) 11日間
(2)夏休み期間:
平成11年7月17日(土)から8月31日(火) 46日間
b)イベントの集中実施期間
季節や個々のイベント内容等を総合的に判断し、調整を行い実施時間を決定する。
2 田辺新庄シンボルパークで実施する主なイベント
a)「ジャパンエキスポ 南紀熊野体験博 リゾートピアわかやま'99」開会式
(1)日時:平成11年4月28日(水)午後1時~
(2)実施場所:野外音楽堂
b)南紀熊野体験博オープニングイベント
(1)実施期間:平成11年4月29日(祝)~5月9日(日)
(2)実施場所:野外音楽堂を中心に展開
(3)内 容:開幕を記念して、11日間にわたり特別イベント・プログラムを展開する。
c)常設型イベント:光と映像と音のイリュージョン

(1)実施期間:全期間
(2)実施場所:野外音楽堂
(3)実施時間:日没から閉場までの間の約20分間
(4)内 容:光を中心に演出することで、夜のリゾート環境を魅力的にするとともに博覧会のテーマやスピリットを表現するイベントとする。
d)レギュラー型イベント:夕暮れリゾートフェスタ
(1)実施期間:平成11年4月29日(祝)から5月9日(日)
平成11年7月17日(土)から8月31日(火)
(2)実施場所:野外音楽堂
(3)実施時間:午後6時30分~午後8時00分頃
(4)内容(例):軽音楽、演劇、パフォーマンス、管弦楽団、コンサート等
e)環境演出型イベント:花と緑のファンタジー
(1)実施期間:ゴールデンウィーク、夏休み、土日祝祭日を中心に
(2)実施場所:芝生広場
(3)実施時間:昼頃から夕暮れ時にかけて
(4)内容(例):「こころのリゾート・コンサート」「こころが交わるコンサート」等
f)関連地域イベント
(1)実施期間:ゴールデンウィーク、夏休み、土日祝日を中心に
(2)実施場所:野外音楽堂、芝生広場を中心に
(3)内 容:関連広域地域や海外の姉妹(友好)提携先等が、各地の伝統芸能、郷土芸能、音楽や踊り等を展開し、有機的な地域ネットワークの形成を図る。
3 那智勝浦シンボルパークで実施する主なイベント
a)「ジャパンエキスポ 南紀熊野体験博 リゾートピアわかやま'99」開幕式
(1)日 時:平成11年4月29日(祝)午前11時
(2)実施場所:ゲート付近
b)南紀熊野体験博オープニングイベント
(1)実施期間:平成11年4月29日(祝)~5月9日(日)
(2)実施場所:イベントステージ、海水浴場エリア
(3)内 容:開幕を記念して、11日間にわたり特別イベント・プログラムを展開する。
c)常設型イベント:光と音と映像のファンタジー

(1)実施期間:全期間(一部イベント内容は期間限定とする。)
(2)実施場所:光の森とイベントステージ
(3)実施時間:日没から閉場までの間の約20分間
(4)内 容:光と音を中心に演出することで、夜のリゾート環境を魅力的にするとともに、博覧会のテーマやスピリットを表現するイベントとする。
d)レギュラー型イベント:“光の森”空間の演出
(1)実施期間:全期間
(2)実施場所:イベントステージ前空間
(3)実施時間:日没から閉場まで
(4)内 容:数万個の電球木々に施し、日没から幻想的で、かつこころを和ませるリゾート空間“光の森”を創り出す。
e)環境演出型イベント:命と海のファンタジー
(1)実施期間:ゴールデンウィーク、夏休み、土日祝祭日を中心に
(2)実施場所:イベントステージを中心に
(3)実施時間:夕暮れ時を中心に
(4)内容(例):「こころのリゾート・コンサート」「こころが交わるコンサート」等
f)関連地域イベント
(1)実施期間:ゴールデンウィーク、夏休み、土日祝祭日を中心に
(2)実施場所:イベントステージを中心に
(3)内 容:関連広域地域や海外の姉妹(友好)提携先等が、各地の伝統芸能、郷土芸能、音楽や踊り等を展開し、有機的な地域ネットワークの形成を図る。
E シンボル空間のイベント
1 基本的な考え方
シンボル空間(滝尻王子~本宮大社)は、博覧会のテーマや訴求点を象徴的にアピールする場所であり、特に熊野古道は「こころにリゾート実感」を体現する空間である。
2 熊野古道シンボル空間で実施する主なイベント
a)熊野古道・清姫淵イベント/本宮町大斎原イベント


(1)実施期間:ゴールデンウィークと夏休みを中心に
(2)実施場所:中辺路町清姫淵常設ステージ/本宮町大斎原
(3)内 容:熊野の自然、歴史、文化をテーマにし、すばらしい環境と調和したイベントを、期間中数回実施する。
b)熊野古道なかへち美術館・企画展
熊野古道、熊野の歴史や文化、熊野に縁のある作家等をテーマにした芸術作品(絵画、写真等)の企画展を実施する。
c)熊野古道・近露イベント
(1)実施期間:ゴールデンウィークと夏休み、土日祝祭日を中心に
(2)実施場所:中辺路町近露(美術館横のグラウンド)
(3)内 容:熊野古道「中辺路~本宮」ルートのほぼ中間点にあたる近露で、休憩所や軽飲食および特産品販売等の実施を行う。
7 会場計画
A 基本方針
南紀熊野体験博の会場計画は、南紀熊野地域全体にわたって博覧会らしい適切な修景を施すことにある。しかし、それはいたずらに人工的な施設修景を加えることではなく、自然資源の美しさをよりひきたてるような整理や整備を行うことが基本である。
B 田辺新庄シンボルパーク

1 施設の概要
○ゲート | 北・東にアーチを設置する。 |
○インフォメーション | 北・東ゲートの近くに設置する。 |
○総合情報センター | 博覧会全体の情報や各種サービスを提供する施設 |
○野外音楽堂 | イベントの中心的施設で様々なイベントを展開する。 |
○テーマ館 | 博覧会のテーマ及び南紀熊野の魅力を表現する。 |
○集合館:南紀熊野市場 | 飲食や地場産品を販売する屋内型の施設。 |
○企業館 | 企業出展のパビリオン(2館予定) |
○美術館 | 既存施設で博覧会と連動した展示展開を実施する。 |
○修景施設 | 博覧会を盛り上げるモニュメントや噴水を設置する。 |
○飲食・物販施設 | テイクアウトを主体とした屋内型の飲食・物販施設。 |
○休養施設 | 随所にパラソル・ベンチ等の休養施設を設置する。 |
○便益施設 | トイレ、喫煙所等を設置し、来場者の便益を図る。 |
○運営管理施設 | シンボルパークを運営するための拠点施設。 |
2 テーマ館の概要
テーマ館では、南紀熊野体験博の基本テーマ「こころにリゾート実感」を表現する展示を行う。
●展示展開案
○南紀熊野体験博テーマゾーン
○南紀熊野地域PRゾーン
○フリーゾーン
3 集合館:南紀熊野市場(仮称)の概要
気軽に立ち寄ることのできる飲食施設と、地場産品を中心に展示・販売する集合施設で、館内を小間割りすることでよりバラエティに富んだ出展ができる。
C 那智勝浦シンボルパーク

1 施設の概要
○エントランス | 来訪者を迎えるエントランス。 |
○インフォメーション | 会場案内や各種情報サービスを提供する施設。 |
○総合情報センター | 博覧会全体の情報や各種サービスを提供する施設。 |
○イベントステージ | イベントの中心的施設で様々なイベントを展開する。 |
○テーマ館 | 博覧会のテーマ及び南紀熊野の魅力を表現する。 |
○集合館:南紀熊野市場 | 飲食や地場産品を販売する屋内型の施設。 |
○シーサイド・ブリッジ(仮称) | 那智川河口に設置し、駐車場と博覧会施設を結ぶ |
○海中パビリオン | 世界初の海中パビリオンで、様々なイベントも実施。 |
○マリンスポーツ施設 | 様々なマリンスポーツを体験できる施設。 |
○修景施設 | 博覧会を盛り上げるモニュメントや噴水を設置する。 |
○飲食・物販施設 | テイクアウトを主体とした屋内型の飲食・物販施設。 |
○休養施設 | 随所にパラソル・ベンチ等の休養施設を設置する。 |
○便益施設 | トイレ、喫煙所等を設置し、来場者の便益を図る。 |
○運営管理施設 | シンボルパークを運営するための拠点施設。 |
2 テーマ館の概要
テーマ館では、南紀熊野体験博の基本テーマ「こころにリゾート実感」を表現する展示を行う。
●展示展開案
○南紀熊野体験博テーマゾーン
○南紀熊野地域PRゾーン
○フリーゾーン
3 集合館:南紀熊野市場(仮称)の概要
気軽に立ち寄ることのできる飲食施設と、地場産品を中心に展示・販売する集合施設で、館内を小間割りすることでよりバラエティに富んだ出展ができる。
D 熊野古道シンボル空間
熊野古道シンボル空間は、南紀熊野体験博のテーマや訴求点を象徴的にアピールする場所であり、シンボルパークとともに博覧会の象徴的な場所である。
熊野古道を散策体験する来訪者に、様々な情報等のサービスを提供するため、「中辺路町熊野古道館」と「本宮町山村開発センター」をシンボル空間の拠点とする。
両施設では、熊野古道に関する説明を各種展示や映像で紹介する。
※上記の記事は1997年10月に個人のWebサイトに掲載したものを再掲しました。
この実施計画において「田辺新庄シンボルパーク」として位置づけられたのは、田辺市の都市公園である「新庄総合公園」です。南紀熊野体験博の出発点となった「南紀活性化イベント」の企画段階では隣接する白浜町の「白浜空港跡地」を会場とする案も検討されましたが、この実施計画が策定された頃は新庄総合公園の竣工を間近に控えた時期であり、既に修景整備が進んでいたことから、経費の節減と既存施設の有効活用という両面から同公園をシンボルパークとすることが決定されたようです。
南紀熊野体験博の後、新庄総合公園は市民の憩いの場として今もなお多くの人々に利用されていますが、平成23年(2011)5月には、第62回全国植樹祭の主会場となり、当時の天皇皇后両陛下をお迎えして盛大な式典が開催されたことも特筆すべき出来事でしょう。
新庄総合公園|田辺市
また、「那智勝浦シンボルパーク」として位置づけられたのは、那智勝浦町にある「那智海水浴場(通称:ブルービーチ那智)」です。ここは約800mにおよぶ広大な砂浜で知られる海水浴場で、JR那智駅に隣接していることから、現在もなお多くの海水浴客に親しまれています。今年(2021)は新型コロナウィルス感染拡大防止のため8月以降は利用が制限されていたようですが、昨年(2020)にはビーチカフェ&グランピング施設がオープンするなど、時代に即した新たな動きも見られるようです。
和歌山県 那智勝浦にビーチカフェ&グランピングが誕生。「BLUE BEACH NACHI(ブルービーチ那智)」9月17日(木)から宿泊可能!カフェ利用も宿泊も青いビーチが目の前。抜群のロケーション!|株式会社Gingerのプレスリリース
シンボルパークに準ずるものと位置づけられた「熊野古道シンボル空間」の拠点の一つである「中辺路町熊野古道館(現在は田辺市)」は、熊野九十九王子の一つとして知られる「滝尻王子」のそばに設けられた情報拠点施設です。熊野古道の中でも、この滝尻王子から牛馬童子像を経て近露王子へと至るコースは観光客に人気のルートとなっており、特に近年(新型コロナウィルス感染拡大以前)は多くの外国人客が訪れていました。
また、このコースの目的地となる近露王子王子付近には「熊野古道なかへち美術館(1997年3月開館)」があり、南紀熊野体験博の際にはこの美術館周辺を「中辺路いやしの広場」と名付けて駐車場や商業施設が開設され、多くの人々で賑わいました。
なかへちの施設 - 中辺路町観光協会(Nakahechi Tourism Association)
「熊野古道シンボル空間」のもうひとつの拠点であった「本宮町山村開発センター」は、本宮町(現在は田辺市本宮町)にあった施設で、国道168号線をはさんで熊野本宮大社の対面に所在していました。この施設は、昭和48年(1973)の開館以来本宮町の文化や交流の拠点施設として活用されてきましたが、老朽化のため南紀熊野体験博の8年後となる平成19年度(2007)に解体撤去され、その跡地には現在「和歌山県世界遺産センター」が開設されています。
和歌山県世界遺産センター
熊野古道とその周辺地域は、平成16年(2004)に「紀伊山地の霊場と参詣道」としてユネスコの世界遺産に登録されました。この登録の嚆矢となったのは県内の青年たちが平成9年(1997)に立ち上げた「「熊野古道」を世界遺産に登録するプロジェクト準備会」という任意団体の活動であったことはよく知られていると思いますが、くしくもこうした活動と同時期に南紀熊野体験博の計画が進められていたことも、世界遺産登録への後押しになったのではないかと思われます。
熊野古道を世界遺産に登録するプロジェクト準備会