「南紀熊野体験博の記録」のカテゴリーでは、過去の個人サイトに掲載していた記事のうち、「JAPAN EXPO 南紀熊野体験博(1999.4月~9月)」に関するものを再掲していきます。
今回の記事は、平成10年(1998)10月に発行された新しいパンフレットの紹介です。例によって、当時のインターネット環境ではデータ量の多い画像は忌避されていたため大変解像度の低い画像しか残っていないのですが、その記載内容を文字起こしして掲載していますのでご容赦ください。
なお、後段ではこの南紀熊野体験博をきっかけとして始まった取り組みが博覧会終了後にも続けられている事例等を紹介します。
1998年10月、南紀熊野体験博の新しいパンフレットが出来上がりましたのでご覧ください。
「いやす」
「みたす」
「よみがえる」
こころにリゾート実感
◎イラストは、ジョン・バーニンガムの作品です。彼の描く大自然を舞台にした物語が、「南紀熊野体験博」のテーマストーリー(絵本)となります。
開催地域
直接対象地域
和歌山県・南紀熊野地域
田辺市/西牟婁郡
(白浜町、中辺路町、大塔村、上富田町、日置川町、すさみ町、串本町)
新宮市/東牟婁郡
(那智勝浦町、太地町、古座町、古座川町、熊野川町、本宮町、北山村)
関連広域地域
和歌山県・紀中地域
和歌山県・紀北地域
奈良県関連地域
三重県関連地域
和歌山の大自然がそのまま会場。
いつでも、いろいろな体験ができる、それが南紀熊野体験博です。
日本を代表するリゾート・和歌山県。
なかでも南紀熊野は、心と体を癒す場として古くから人々に親しまれてきました。
南紀熊野体験博は、人と自然が共生し、心と体を癒し、新たな活力を生む、新しいリゾートライフを提案する博覧会です。
会場は、南紀熊野全域。豊かな自然、歴史や文化、そして人との出会いを通して、こころのリゾートを実感できる様々なイベントを展開します。
シンボルパーク
南紀熊野体験博の東西の玄関口、田辺新庄と那智勝浦にはシンボルパークを常設。「光と映像と音のイリュージョン」や「ミニコンサート」「和歌山の伝統芸能」など、多彩な催し物を行います。また体験博の情報センターにもなります。
田辺新庄シンボルパーク
開場時間
11:00AM~9:00PM(入場無料)
6月7日(月)から6月30日(水)までの平日は6:00まで
JR紀伊田辺駅からシャトルバスで約15分
JR白浜駅からシャトルバスで約10分
南紀白浜空港から路線バスで約20分
駐車場あり
那智勝浦シンボルパーク
開場時間
11:00AM~9:00PM(入場無料)
6月7日(月)から6月30日(水)までの平日は6:00まで
JR那智駅から約1分
JR紀伊勝浦駅からシャトルバスで約10分
駐車場あり
10万人の熊野詣
かつて「蛾の熊野詣」と呼ばれるほどの賑わいを見せた熊野古道。
その中でも特に往時の姿を今にとどめる「中辺路ルート」で、様々な地域イベントやウォークイベントを展開。熊野古道の自然・歴史・文化に触れながら、新たな熊野の魅力が発見できます。
●個人ウォーカーの方には・・・・
大型バスも止められる駐車場をご用意。
滝尻王子と近露王子間では車の回送サービスも実施。気軽に熊野古道ウォークが楽しめます。
また紀伊田辺駅から中辺路、本宮経由新宮行き路線バスも運行しています。
●熊野古道お手軽ウォーク(30分~4O分)
・道の駅熊野古道中辺路~牛馬童子~近露平安村
・野中周辺(野中の清水・秀衡桜・一方杉・継桜王子)
・熊野本宮大社周辺(熊野本宮大社~大斎原周辺)
・大門板(大門坂入口~熊野那智大社・青岸渡寺)
※その他、時間・距離に応じたバリエーションが可能です。
熊野古道関連イベント
熊野御幸記の旅
鎌倉時代の歌人、藤原定家の「熊野御幸記」(日記)を素材に、京都から熊野三山を目指して歩きます。
ステージイベント
●清姫淵ステージ
スペイン「サンティアゴヘの道」との姉妹道提携記念イベント。安珍清姫にちなんだ演劇など。
●大斎原ステージ
能「スサノオ」、演劇「小栗判官」、太鼓フェスティバルなど。
「熊野の森」蘇生イベント
照葉樹などの植樹を実施。熊野の森を守り育て、次の世代に引き継いでいきます。
熊野シンポジウム
熊野をテーマにしたシンポジウムを開催。南紀熊野の魅力を学術的に探究します。
熊野古道ご満喫ウィーク
熊野古道を数区間に分け、一週間ごとに区間を変えて、様々な伝統芸能やおもてなしサービスを行います。
黒潮マリンスポーツフェスティバル
南紀熊野の海が舞台。誰でも参加できるビ-チスポーツ大会や釣り大会から、プロも参加する世界レベルの競技会まで、マリンスポーツの楽しめる南紀熊野ならではのフェスティバルです。パラセーリングやバナナボートなど、様々なマリンスポーツが楽しめる体験イベントも実施します。また、釣った魚の大きさを競う「黒潮大物釣り大賞」や「海中フォトコンテスト」は、期間中を通して行います。
南紀ビーチスポーツフェスティバル <白浜町(6月)、那智勝浦町(8月)>
マリンスポーツ競技会
●熊野灘シーカヤックマラソン<串本町・古座町(5月)>
●A.S.P.WQS世界プロサーフィン選手権大会 <那智勝滞町(9月)>
●世界スーパー・ライフセービングイン南紀白浜<白浜町(7月)>
黒潮釣リフェスティバル
●トローリングサーキット<すさみ沖、串本沖、那智勝浦沖(6月、7月)>
●ブラックバス釣りサーキット<北山村、大塔村(5月、7月、9月)>
●ルアーフィッシング(シイラ釣り)大会<潮岬沖(8月)>
●黒潮大物釣り大賞 <南紀熊野全域(期間中)>
黒潮マリンスポーツ体験<那智勝浦町(夏季期間中)>
海中フォトコンテスト<南紀熊野全域(期間中)>
黒潮自然ふれあい王国
全国から、さらには海外からも子どもたちが参加する、2泊3日の自然体験キャンプ。南紀熊野でしか味わえないリゾート体験を通して、子どもたちの心の交流を深めます。
実施場所
串本町潮岬を中心にした地域
実施期間
7月下旬~8月下旬の間で3回実施
参加対象
小学校3年生~中学校2年生までの約300名(計約900名)
リゾート体験イベント
南紀熊野地域のそれぞれの市町村で、地域の特性を生かした様々な体験プログラムを有料で提供。100種類以上のプログラムを用意しています。(お申し込みは1月から受付予定)
イベントの一例
●梅もぎと梅ジュースづくり体験<田辺市>
●シーカヤックジャンボリー<白浜町>
●宇江敏勝と歩く熊野古道<中辺路町>
●楽しい陶芸教室<大塔村>
●ひょうたん細工に挑戦<上富田町>
●川添茶茶摘み体験<日置川町>
●イノブータン王国海の教室<すさみ町>
●初めての人のための串本体験ダイビング教室<串本町>
●熊野比丘尼体験<新宮市>
●平安衣装で歩く熊野古道大門坂<那智勝浦町>
●黒潮 捕鯨船洋上体験<太地町>
●熊野自然体験学校・九龍島スクール<古座町>
●古座川火振り漁<古座川町>
●熊野の猟師と歩く原生林と熊野古道<熊野川町>
●奥熊野鮎釣り大会<本宮町>
●北山ラフティング体験<北山村>
地域イベント
地域の特性や季節などの条件を活かしたイベント。南紀熊野の各地で開催します。
イベントの一例
●花のまち I LOVE TANABE<田辺市(5/28-5/30)>
●世界押花コレクション展’99 IN SHIRAHAMA<白浜町(5/10-5/31)>
●熊野古道清姫まつり<中辺路町(7/24・25)>
●チャレンジ手作りカヌー<大塔村(5月-8月のうち10日間)>
●口熊野かみとんだフラワーフェスティバル<上富田町(5/8・9、9/18・19)>
●ひきがわ祭り<日置川町(8/1)>
●’99マリンスポーツフェスティバルin すさみ<すさみ町(5/30-8/31)>
●潮岬フィールドフェスティバル<串本町(5/22・23)>
●熊野新宮モダンカンカン<新宮市(9/4-9/12)>
●一万人の熊野詣<那智勝浦町(9/19)>
●鯨・夢・ファンタジー<太地町(7/24)>
●河内祭り(御舟祭り)<古座町(7/24・25)>
●司馬遼太郎フェア<古座川町(4/29-5/6)>
●熊野川カヌーマラソン<熊野川町(5月下旬)>
●本宮八咫の火祭り<本宮町(9/18)>
●筏まつり<北山村(7月下旬)>
南紀熊野体験博実行委員会
640-8585 和歌山市小松原通一丁目1番地
※上記の記事は1998年10月に個人のWebサイトに掲載したものを再掲しました。
南紀熊野体験博は、大規模な地方博覧会では全国初となる「オープンエリア型博覧会」を標榜していました。これは、特定の囲い込み型の会場を持たず、広域的な地域全体で博覧会の期間中にさまざまなイベントを絶え間なく開催していくことで、来場者に地域全体を周遊してもらおうという大変意欲的な試みでした。
しかしながら、そのためには会場エリア全体で多種多様なイベントを企画・実施していく必要があり、その原動力となる地域住民の皆さんのアイデアと実行力が最大の関心事となりました。
上記のパンフレットは、博覧会開催の約半年前に制作されたものであり、まだまだ不確定の部分も多かったのですが、それでも紀南地域各地で開催されるイベントの概要が徐々に見えてきた時期のものです。
こうした南紀熊野体験博のために各地で企画されたイベントは、博覧会終了後もそれぞれの地域において重要な観光コンテンツとして形を変えながらも継続されているものが数多くあります。
マリンスポーツや釣りは、南紀熊野体験博以前から既に人気の高いコンテンツでしたが、博覧会を通じて新たな魅力が提供されるようになりました。例えば、すさみ町にある「海中郵便ポスト」や「町立エビとカニの水族館」はこの博覧会のために開設されたものです。
海中郵便ポスト | すさみ町商工会
すさみ町立エビとカニの水族館 | 和歌山県すさみ町にあるエビとカニだけに特化した水族館です。廃校となった旧江住中学校の体育館を再利用しており館内ではエビやカニを中心に約150種の甲殻類を展示しています。
梅もぎ体験、茶摘体験、陶芸教室などの体験型プログラムは、後に「和歌山ほんまもん体験※」という名前が付けられ、県内全体を対象とする体験型観光メニューとして定着しました。和歌山県の公式観光サイト「ほんまもん体験」では、現在約400種類ほどの体験メニューが提供されており、随時追加・更新が行われています。
※「ほんまもん」は「本物」を意味する関西弁・和歌山弁。2001年に放送されたNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「ほんまもん」が和歌山県本宮町を舞台にしていたことから、和歌山県の体験型観光の魅力を伝える言葉として「ほんまもん体験」というキャッチフレーズが使われるようになった。
連続テレビ小説 ほんまもん | NHK放送史(動画・記事)
また、「10万人の熊野詣」に代表されるような熊野古道を歩くイベントでは、参加者と一緒に歩きながら古道周辺の歴史や文化を紹介することが重要と考えられたため、これを契機として各地で「語り部」の養成や組織化が行われました。龍谷大学の寺田憲弘氏は「ガイドとしての語り部/表象としての語り部-熊野古道の語り部を事例として-(日本観光研究学会「観光研究」31 巻(2020) 1 号)」において熊野古道の語り部について南紀熊野体験博が果たした役割について次のように述べています。
現在、熊野古道中辺路ルート中心となっている中辺路地域では、1978 年の文化庁による歴史の道調査整備事業対象地域指定後に、古道を中心とした郷土史を研究する近野史探会というグループが作られていた。体験博を機にこの会の会長を中心にして、新たに語り部になった人たちを加え、「漂探古道」という語り部のグループがつくられた。観光客の案内に加え、月に 2 回ぐらいの頻度で勉強会を行っている。
本宮町地域においても、それ以前から語り部に登録されていた人物を中心に「熊野本宮語り部の会」が博覧会の前年につくられた。月に一回学習会が開かれ、それ以外にも現地実習が行われている。
「漂探古道」は世界遺産指定後に、いくつかの団体に分裂したが、現在も語り部グループとして活動しており、観光客の依頼先としても主要な対象となっている。
ガイドとしての語り部/表象としての語り部
ふるさとづくり賞振興奨励賞 漂探古道
熊野本宮語り部の会の結成とその取り組み
南紀熊野体験博では新たな「祭り」も誕生しました。上記の「地域イベント」に掲載されている「本宮 八咫の火祭り(ほんぐう やたのひまつり)」は、かつて神武天皇を導いたとされる八咫烏(やたがらす)の伝説にちなんで南紀熊野体験博のために開催された祭りですが、その後も毎年開催されるようになり現在ではすっかり地域に定着した行事となりました。熊野本宮大社でも火祭りが行われるようになったことから、古くから続く神倉神社(熊野速玉大社の摂社)の「御燈祭り」、熊野那智大社の「那智の扇祭り(那智の火祭り)」とあわせて、熊野三山を構成する各神社が全て「火祭り」を行うようになりました。