生石高原の麓から

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’97エアポートジムカーナ IN 白浜(1997.11.23)

 「モータースポーツ回顧録」のカテゴリーでは、過去の個人サイトに掲載していたモータースポーツ関連の記事を再掲していきます。

 今回の記事は1997年11月に旧南紀白浜空港跡地で開催された「エアポートジムカーナ IN 白浜」の話題です。

 エアポートジムカーナについては、この年の2月に開催されたシリーズ(JMRC近畿フレッシュマンシリーズ)第2戦の模様を紹介したところですが、今回はそのシリーズ第9戦の紹介です。
’97エアポートジムカーナ IN 白浜(1997.2.23)

 

 前回の記事でも解説しましたが、「ジムカーナ」は舗装された広い敷地の中にパイロ(いわゆる「三角コーン」)などを並べてコースを設定し、そのコースを一台ずつ順番に走行して、その走行タイムを争うというモータースポーツです(舗装していないコースを走る類似の競技は「ダートトライアル(通称:ダートラ)」といいます)

 東海地方には鈴鹿サーキット、中国地方には岡山国際サーキット(旧:TIサーキット英田という国際格式の常設サーキットがあり、ジムカーナ競技でも大規模な大会はこうした会場で行われることが多いのですが、関西の常設サーキットは名阪スポーツランドという小規模な施設(レーシングカート・ジムカーナのみJAF公認)しかないため、これ以外の場所ではレジャー施設の駐車場を転用する形で競技会が開催されています(現在JAF公認施設となっているのは舞洲スポーツアイランド姫路セントラルパーク、グランスノー奥伊吹の3か所)
 こうした環境の中、南紀白浜空港の跡地は滑走路部分の延長が1200mもあり、自動車競技には最適ということで、この年はここを用いた公式戦が開催されたのです。滑走路を用いて自動車競技を行う場合は、長い直線コースが確保できるため通常の競技会よりは高いスピードを出せるようなコース設定ができるという大きなメリットがある反面、路面にスリップ防止のための細かい溝が設けられているためにタイヤの摩耗が激しいというデメリットもあるのだそうです。
 とはいえ、今回の競技会は思い切りアクセルが踏めるようなコース設定になっていたということで参加選手には概ね好評であったと聞きました。

 残念ながら2022年現在では旧南紀白浜空港跡地を用いたジムカーナの公式戦は開催されていませんが、自転車競技では2019年まで「エアポートクリテリウム」という競技会が開催されていました。2020年は運営上の都合で中止になり、その後も新型コロナウイルス感染症の問題等で開催されていないようですが、せっかくの広大な敷地があるのですから、自動車、自転車にかぎらず、様々な形でイベントに活用できればと思っています。
白浜エアポートクリテリウム

 

 それでは、エアポートジムカーナの模様を紹介していきます。

 

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JAF公認準国内競技
1997 JMRC近畿フレッシュマンシリーズNo.9
マッシモ和歌山シリーズNo.6
TTSPクローズドジムカーナ
エアポートジムカーナ IN 白浜

 

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 私が観戦するモータースポーツは、鈴鹿サーキットを中心に開催される全日本選手権クラスのイベントが多いのですが、たまには地元で行われる身近なイベントを見に行くこともあります。
 今回は、白浜町南紀白浜空港跡地で開催されたジムカーナのローカルイベント、「エアポートジムカーナ イン 白浜」を紹介しましょう。このイベントは今回が初めてではなく、今年の2月に第一回が行われました。前回のレポートでも紹介しましたが、「ジムカーナ」はコースに立てられたパイロンの間を、決められたコースに従っていかに速く走れるかを競う競技で、クラスによっては普段通勤に使っている普通の自家用車でも出場できるところから、「参加するモータースポーツ」として人気が高まっています。

 特に、今回の「エアポートジムカーナ」は、旧南紀白浜空港跡地を会場として開催されることから、その滑走路部分では異例なほど高速のコース設定になっているのが特徴で、近畿一円から90台近くの参加者が集まりました。

(今回は結果表が手元にありませんので、記録は掲載していません。あしからずご了承ください。)

 

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 急角度でパイロンターンを行うためにフルプレーキングを行う小田惣一選手のカローラ・レビン。競技専用車ではなく、普通の街乗りで使用している自動車で急激なターンを行おうとすれば、どうしても車体が大きく傾き、タイヤがブレーキロックでもうもうと煙を上げるというのが一般的な状態です。しかし、競技ででもなければ自家用車にこれほど負担をかけるような走り方はしませんし、やろうと思っても実際にはなかなかできるものではありません。

 

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 こちらはFRクラスに出場の山本恭弘選手のスズキ・カプチーノジムカーナの場合、自動車の種類ごとに細かなクラス分けが行われており、また参加選手がそれぞれ街乗りで使っている自動車を持ち込む例が多いところから、出場車両のバリエーションが多いというのが楽しみの一つです。

 

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 こちらは、名田洋選手のスプリンター・トレノ、名付けて「ATIK・只今強化中・トレノ」。この型式、AE86というトレノは、モータースポーツに最適のFR(フロントエンジン、リアドライブ)というレイアウトを持ち、エンジンも1600ccとしてはパワフルであるというところから、入門者に多く愛されているマシンです。すでに生産終了から10年以上経過した古い型ですが、最近は週刊「ヤングマガジン」でAE86使いの高校生が公道最速を目指すという漫画「頭文字(イニシャル)」が大人気で、主人公が乗っている白黒ツートーンの通称「パンダトレノ」の中古車価格が急上昇したという話もあり、依然としてファンは多いようです(「頭文字D」の私的ファンクラブなんていうのもあります)

 

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 今回の競技で一番ブッとんだのがこれ、尾崎薫選手が持ち込んだホンダNSX TYPE-R。無改造のN-2クラスに参加したのですが、同じクラスの他のマシンがシビックトレノミラージュなどという軽い車でパイロンターンのスピードを見せたのに対し、NSXはエンジンパワーにものを言わせて高速区間でタイムを稼ぎ、ダントツでクラストップの座につきました。それにしても、1000万円を超える車で、ジムカーナに出場するなんて・・・・・・。

 

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 そのNSXとある意味では対極の位置にあるのが、アルト・ワークスで出場した三木田良行選手。今回のようにエンジンパワーが重要なコースでは不利なことは否めませんが、もう少し低速のコースでは小回りの良さを生かしていいところへいくのではないでしょうか。必ずしも高価な車でなくても十分に楽しめるところがジムカーナの良さであると言えます。

 

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 こちらは国産車としては貴重な存在のミッドシップ(エンジンがドライバーの後ろにある)レイアウトを持つトヨタ・MR2、ドライバーは矢野英樹選手。ジムカーナという競技の性格上、前後の重量配分がうまくバランスできるミッドシップのマシンは絶対有利なはずなんですが、現実にはこのクラスではホンダのインテグラ・タイプRが圧倒的に強いというのが不思議なところです。とはいえ、確かにインテグラ・タイプRのエンジンは、市販車用としては異常とも言えるほどハイパワーなものであるのことは間違いないのですが。

 

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 最近、555のマークを付けたスバル・インプレッサ世界ラリー選手権を3連覇したというコマーシャルが流れていますが、4輪駆動のインプレッサWRXラリージムカーナなどの市販車ベースのモータースポーツにおいて絶大な人気を誇っています。
 ゼッケン82は、竹村隆志選手の駆るインプレッサWRX。最速タイム1分40秒560で今回の競技では第3位につけました。

 

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 こちらは、久保哲選手の真っ赤なインプレッサ。レーシングカーというのは派手なカラーリングのものが多いというイメージがありますが、ジムカーナに限って言えば圧倒的に白のマシンが多いようです。もちろん、大きなスポンサーが付いていないということが一番の理由なんですが、もっと切実な話としては、競技中にいろいろなところへぶつけることが多いため、色のついたマシンでは板金修理をしたときに塗装代が高くついてしまうので、少しでも安く上げるためというのが正直なところのようです。

 

 

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 インプレッサWRXと並んで世界ラリー選手権をリードする三菱の戦略マシン、ランサー・エボリューション。これは高木真哉選手が駆るエボリューション3です。ラリージムカーナにおいては、ハイパワーなエンジンによる高い出力を四輪駆動システムによって無駄なく路面に伝達することによって比類のない強さを発揮するこの2車種ですが、それだけにミスのない素早いテクニックが要求されるという点で、ドライバーにとっても厳しいクラスであると言えます。

 

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 こちらは、小玉知司選手の乗るランサー・エボリューション4。最近、「究極のランエボ」と呼ばれるエボリューション5も発表されましたが、現在競技に出場しているマシンの中では最新の「エボ・フォー」は、まさに「公道を走るWRC世界ラリー選手権マシン」と呼ばれるにふさわしいモンスターです。360度ターンなどの細かなテクニックが要求される部分が必ずしも得意とは言えない4輪駆動マシンですが、小玉選手は絶妙なテクニックのさえを見せ、2位以下を大差で引き離して本日の総合優勝を遂げました。

 


番外編

 

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 今回のジムカーナの会場となった南紀白浜空港は、(新)南紀白浜空港に隣接しています。このため、ギャラリー席となった滑走路脇の小高い丘からは、新空港の滑走路を反対側に望むことができるのです。
 写真は、11月22、23、24の3日間に限って運行された南紀白浜~名古屋間の臨時便です。運行会社は中日本エアラインサービス(NAL)、ちょっと見慣れないこの機体は、オランダ製のフォッカー50という飛行機だそうです。NALのホームページによると、この飛行機は、「最新のハイテクを備えたオランダ製のターボプロップジェット、56人乗の航空機 。安全性の高い機材として世界的に定評がある。翼が客席の上にあるので視界をさまたげないのが特長で快適な「空の旅」が楽しめます。 シートまわりはゆったりとしたスペースを確保してあり、天井高も充分とってあります。」とのことです 。

 下方に見えるのは、「南紀白浜アドベンチャーワールド」です。野生動物を間近で見られる「サファリワールド」と、イルカやアシカ、オルカなどのショーが楽しめる「マリンワールド」があるほか、パンダやラッコの飼育も行われるなど、一日中楽しめる自然型のテーマパークとなっています。 

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 「番外編」の項で紹介した飛行機「フォッカー50」は、オランダの航空機メーカーであったフォッカー社(1996年に倒産)が開発したプロペラ式の旅客機(最大客席数58席)で、両翼にそれぞれ1基ずつのターボプロップエンジンガスタービンでプロペラを駆動する形式のエンジン)を搭載する機体(双発機)でした。

ja.wikipedia.org

 日本では、上述のように名古屋空港を拠点としていた中日本エアラインサービス(2005年中部国際空港開港に合わせてエアーセントラルに社名を変更、2010年エアーニッポンネットワークエアーネクストと合併して現在はANAウイングス株式会社)が1990年に初導入し、それ以降最大で4機を運行していたようですが、2009年に運行を終えています。
 旧南紀白浜空港では、開港翌年の1969年から名古屋との定期便(フォッカーF27、後にYS-11が就航していましたが、乗客数の減少により1988年1月をもって運休となってしまいました。上記で紹介した臨時便は、この航路を復活をめざしたデモンストレーションの意味があったのでしょうが、残念ながらその後も復活が実現することはありませんでした。

 ちなみに、Wkipediaによると、南紀白浜空港(新・旧)に定期便として就航していた機体には次のようなものがあるそうです。
南紀白浜空港 - Wikipedia

 日本航空機製造 YS-11

1968年の開港以来羽田路線に就航。(後に名古屋路線、大阪路線、福岡路線にも就航。現在は羽田路線以外廃止。)
1996年3月、新空港共用開始に伴うジェット化により羽田路線日本エアシステムから引退。同年10月に福岡路線日本エアコミューターに就航するが、1998年に路線廃止。

ja.wikipedia.org

 フォッカー F27フレンドシップ

1969年開設の名古屋路線に就航(後にYS-11へ変更。1988年運休。)

ja.wikipedia.org

 マクドネル・ダグラス MD-87

1996年新空港開設に伴い羽田路線に就航。初のジェット旅客機となる。

ja.wikipedia.org

 ハンドレページ JS-31

1997年広島西路線に就航(2001年廃止)

ja.wikipedia.org

 エンブラエル 170
2010年羽田路線に就航。一日3往復となる。

ja.wikipedia.org

 ボンバルディア CRJ200

2011年3月~10月の間、羽田路線の昼便に就航。

ja.wikipedia.org

 ボーイング737-800

2015年7月~8月の間、羽田路線の一部に就航。2019年10月以降、全便を同機により運行中。

ja.wikipedia.org