03復刻&解説「紀州 民話の旅」-28古座川町
添野川の村はずれ、小川のほとりに、お地蔵さんをまつった小さな祠がある。太平洋戦争中は全国各地からお参りが続き、近くの人が「弾よけの護符」を出し、祭煙の絶えることがなかったが、平和ないまは、合格析願の学生や地元のわずかな信者がお参りするだけ。
三尾川の光泉寺に樹齢400年、樹高27メートル、幹回り6メートルという、県内最大のイチョウの巨木がある。そばに「気根(乳)に手をふれて、一心不乱に祈念するとき、日下俊斉翁の古事にのっとり、樹勢の力を得て霊験あらたか」との説明板。名づけて「子育て…
清らかな流れを誇る古座川。その両岸に迫る奇岩、景峰のうちでも最高の圧観は、高さ100メートル、幅が500メートルの大岩山。流れにそって、屏風のようにそそり立つ「一枚岩」に、こんな話がある。
古座川の清流が巨岩にぶつかり、深渕をなしているところがある。これを「うるしが渕」という。
古座川ぞいの山峡は、神経痛や傷などに効く鉱泉が豊富。これをパイプでひいて沸かし、風呂に利用している旅館や民家が多い。別名「才の谷温泉」といい、この地方に多い弘法大師の徳をたたえる伝説がある。
古座川岸にあるこの山は、その優し気な名前とはうらはらに、高さ150メートルの、厳しくそそり立つ岩山。愛する人のために短かい生涯を終えた少女の、悲しい物語を秘めている。