03復刻&解説「紀州 民話の旅」-15広川町
年代や場所は不明だが、やはり小鶴谷地方に長者屋敷伝説がある。長者ケ峰に土地の人が「お屋敷」と呼んでいる平地があり、そのあたりか。
標高650メートルの長者ケ峰。広川町と中津村の境界でもある。そのふもと、津木小鶴谷。大小の岩々がそそり立ち、容易に近づけないところに椎木(しいのき)明神がまつられている。一面に椎の木が茂り、ひとかかえ以上もある古木も。
江戸時代の話。広の呉服屋「丸大」に長く投宿していた修業僧が、恩返しにと、自分が刻んだ地蔵尊を置いて行ったとか。小さな石仏なので、「丸大」では「長持ち」に安置していたところ、大津波でほとんどの家財道具が流されたにもかかわらず、長持ちだけはそ…
(「紀州 民話の旅」番外編) 前項で小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)が明治29年(1896)に英語で記した「A Living God (生ける神)」という物語が、現在に語り継がれている「稲むらの火」の原典であると紹介した。
チャポン、チャポンと、根気よく打ち寄せる小さな波が、西陽に輝やいてみえた。ひっそりとした堤の上に人影はなく、浜風に揺れる櫨(はぜ)の小技だけが、いつまでも、かすかな音を立て続けていた。