生石高原の麓から

和歌山の歴史・文化・伝承などを気ままに書き連ねています

交通案内パンフレット(1999.4) (補足)当時のインターネット環境など

 「南紀熊野体験博の記録」のカテゴリーでは、過去の個人サイトに掲載していた記事のうち、「JAPAN EXPO 南紀熊野体験博(1999.4月~9月)」に関するものを再掲していきます。

 

 今回は、博覧会開会直前に発行された主要会場への交通案内パンフレットを紹介しますが、あわせて当時のインターネット環境や博覧会の公式webサイトなどに関しても紹介していきたいと思います。

 例によって、当時のインターネット環境を反映してかなり画像の解像度が低いので、画像はあくまでも参考程度にご覧ください。

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主要会場への交通のご案内


 いよいよ目前に迫った南紀熊野体験博の開幕に向けて、実行委員会では、主要会場への交通案内を詳しく記載したパンフレットを作成しました。このパンフレットは県内の主要な観光案内所や「道の駅」等で配布されていますが、インターネットをご利用の皆様に、その一部をご照会します。

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南紀熊野体験博公式ホームページはこちらです。
  アドレス http://www.aikis.or.jp/~kumahaku/
  (現在はリンク切れとなっています)

 

情報コーナー

南紀熊野体験博に関するお問い合わせは
  南紀くまの情報センター(南紀熊野体験博実行委員会)

リゾート体験イベント参加の申し込みは
  南紀熊野体験博リゾート体験イベント予約センター

熊野古道紀州の温泉アクセスガイド(公共交通機関利用)」「南紀熊野体験博 魅力まるごとロードマップ自家用車利用)」の申し込みは
 郵便でお申し込みください。
 住所、氏名、年齢、職業を記入し、160円切手を同封のうえ、下記までお申し込みください。
 お申し込みは1通につき1種類とさせていただきます。(発送は4月20日以降になります)
  和歌山県庁総合交通政策課
  「アクセスガイド係」または「ロードマップ係」あて 

 

※上記の記事は1999年4月に個人のWebサイトに掲載したものを再掲しました。

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 上記で「リンク切れ」となっている「南紀熊野体験博公式ホームページ」は、現在"Wayback Machine"というデジタルアーカイブサイト(インターネット上の過去の情報を蓄積、公開するWebサイト)で閲覧することができます。(一部のリンクも利用できるようです)
Wayback Machine 南紀熊野体験博

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Wayback Machineより1999.4.23付けアーカイブ

 上記の画像をご覧いただければ判るように、当時のWebサイトの構成は、現在のスマホ用サイトと同じくらい(あるいはそれ以上に)横幅の狭いデザインとなっていました。これは、当時の主流であったWindows98搭載パソコンの画面解像度が概ね 横800ピクセル X 縦600ピクセル という非常に低いものであり、またそれ以前の主流であった 横640ピクセル X 縦480ピクセル(又は400ピクセルという極めて狭小な画面でインターネットを利用している人も多かったという事情を反映したものです。
富士通、Windows 98搭載の新モデル
 現在のスマホの主流となっているiphone12の画面解像度が 横1170ピクセル X 縦2532ピクセル であり、パソコンでは標準的なフルHD規格の液晶モニタ横1920ピクセル X 縦1080ピクセル であることを考えると、当時は一画面に表示できる情報量がかなり少なかったことがわかります。
参考(日経クロステック 2010年の記事):画面レイアウトを考える

 

 こうしたことからWebサイトの一画面あたりの情報量は現在よりも随分少ないものとならざるを得なかったのですが、これに加えてもう一つ情報量を制約する要因がありました。それが回線速度の問題です。
 現在では携帯電話でも4G、5Gという方式が利用されていて、それぞれ100~300Mbps程度、2~3Gbps(2000~3000Mbps)程度の回線速度が確保されていますが、1999年当時は十分に高速とされていたNTTの「INSネット64」でも回線速度はわずか64kbps(0.064Mbps 2回線をまとめて128kbps=0.128Mbpsとして使用することが可能でした)であり、現在のような高画質の写真をWebサイトに掲載してしまうと、それが画面に表示されるまで何分もじっと待っていなければならないという状況でした(現在では、スマホで契約データ量を使い切って通信制限がかかった状態と考えていただければいいでしょう)

 こうした回線速度の問題に関しては、南紀熊野体験博が開催された1999年というのはある意味でエポックメイキングな年でありました。この年の8月、長野県で日本初の商用ADSL高速インターネット接続サービスが始まり、ついに下り最高で1.5Mbpsの常時接続が利用できるようになったのです。しかしながら、この時点ではまだADSLの普及はそれほど進まず、2002年11月からYahoo! BBが街頭でADSLモデムの無料配布を開始するという暴挙(笑)に出たことによってようやく一般的な認知を得て広く一般家庭に高速(といっても数Mbpsのレベルですが)インターネット常時接続環境が浸透していくことになります。
年表で振り返るブロードバンドの歴史(第1回:通信・回線編)

 また、1999年は携帯電話によるインターネット接続サービスの「iモード」や、悪名高いインターネット匿名掲示板「2ちゃんねる(現在は5ちゃんねる)」が始まっており、ネット利用の裾野がぐんと広がった年であるとも言えるでしょう。
iモード - Wikipedia
2ちゃんねる - Wikipedia

 

 とはいえ、一般市民にとってはまだインターネットが十分に身近になったというわけではなく、総務省が発表した「平成11年 通信白書」によると、平成10年(1998年)度におけるインターネット世帯普及率はわずかに11.0%であったとされています。
第1章序説1 急増するインターネット人口 : 平成11年版 通信白書

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 また、Webサイトを通じた情報発信の取り組みも十分に定着していたとは言えないようで、平成10年(1998年)度末現在の地方公共団体の公式ホームページ開設率は61.5%となっており、まだ約4割の自治体が公式Webサイトを開設していなかった模様です。
(2) ホームページの開設 : 平成11年版 通信白書

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 このような環境のもとで、南紀熊野体験博が公式ホームページを開設して情報発信に努めた(開幕前年の平成10年(1998)8月に開設)ということは、決して先進的であったとまでは評価できないものの、インターネットの普及拡大期にあって、時代の波をきちんと把握してそれなりに適切な対応を行っていたと言えるできるでしょう。