生石高原の麓から

和歌山の歴史・文化・伝承などを気ままに書き連ねています

南紀熊野体験博1年前プレイベント(1998.4)

 「南紀熊野体験博の記録」のカテゴリーでは、過去の個人サイトに掲載していた記事のうち、「JAPAN EXPO 南紀熊野体験博(1999.4月~9月)」に関するものを再掲していきます。

 

 今回の記事では、平成10年(1998)4月に開催された「1年前プレイベント」の様子を紹介しています。

 

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南紀熊野体験博1年前プレイベント
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 平成11年4月29日から9月19日までの144日間を会期として開催される南紀熊野体験博の開幕を1年後に控えた平成10年4月29日、盛大に「1年前プレイベント」が開催されました。今回はそのプレイベントの模様をお知らせします。

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 南紀熊野体験博の開会日までの日数をカウントダウンする「残日計」が、この日、和歌山県庁前に設置されました。西口和歌山県知事を中央に、通産省近畿通産局長(代理)、和歌山県議会議長(代理、副議長)の3人がスイッチを押すと、残日計に「365」の数字が点灯し、盛大にスチームが放出されました。
 これで、いよいよ開幕への足音が現実のものとして響き始めたということになるでしょうか。

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 1年前プレイベントは、残日計が点灯された後、場所を和歌山マリーナシティ内のイベントホール「WAVE」に移して行われました。県警音楽隊の演奏と、県警カラーガード隊による旗の演技の後、西口和歌山県知事南紀熊野体験博にかける知事の心情を述べました。

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 市女笠(いちめがさ)をかぶり、中世の熊野詣の衣装に身を包んだ南紀熊野体験博のキャンペーンレディ。これから、この衣装で全国をまわり、体験博への参加を呼びかけるということです。

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 南紀熊野体験博の総合プロデューサー茶谷幸治氏。平成6年に和歌山市で開催された「世界リゾート博」のイベントプロデューサーを努めるなど、この世界ではかなり知られた人物です。
 この日は、和歌山県が有する天然のイベント会場としての魅力とともに、全国で初めての試みである「非博覧会・広域展開型」のジャパンエキスポが持つ意義を熱く語っていました。
 また、イギリスの絵本作家ジョン・バーニンガム氏が、このイベントのテーマストーリーとして書き下ろした新しい絵本の紹介も行われましたが、この絵本は、今夏以降、日本全国のみならず、世界各国で発売されるそうです。

 

 

ミクル劇団「がんばれ! ダストバスターズ」

 今回の1年前プレイベントの目玉は、なんといってもこのミュージカル「がんばれ! ダストバスターズ」でした。ミクル劇団は、平成2年に開催された「国際花と緑の博覧会」の年に設立された劇団で、同博覧会では300万人の観客を集めたという実力派劇団ですが、今回は、公募により選ばれた県内の子供たち100人が共演するという話題もありました。

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 南紀熊野体験博を楽しみに待っている子供達、いつも自分たちの周りをきれいにし、自然を守ることを何よりも大事に思う優しい子供達ばかりです。

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 その子供達の前に現れたのがこの2人組、ギャラクターズ。あたり一面にゴミをまき散らかすばかりではなく、南紀熊野体験博をテーマにしたクイズに答えられなかった子供達を不思議な力で自分たちの手下にしてしまいます。

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 のこされた子供達の勇気でなんとか仲間は取り返すことができましたが、いつまたギャラクターズがやってくるか判りません。そこで、なんとなく頼りない仙人が思い出したのが、ダストバスターズだったのです。
 頼りになるヒーロー、ダストバスターズの2人組の活躍と、子供達や仙人、森の妖精の協力によってギャラクターズの2人組はとうとう捕まってしまいます。そして、子供達の心に触れて、悪の2人組もやがて自然を大事にする心を身につけるようになったのです。

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 お約束の大団円。100人の子供達とともに出演者が観客席にまでおりてきて、一緒に歌い、躍ります。最後は、長野冬季オリンピックでも歌われた「WAになって踊ろう」の大合唱で幕を閉じました。

 

※上記の記事は1998年4月に個人のWebサイトに掲載したものを再掲しました。

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 プレイベントで総合プロデューサーとして講演を行った茶谷幸治氏は、大手広告代理店の電通で勤務した後、自ら設立した「株式会社経営企画センター」の代表として「アーバンリゾートフェア神戸’93」チーフプロデューサー(1993)、「ジャパンエキスポ世界リゾート博」催事プロデューサー(1994)、「神戸ルミナリエ」第1回・第2回プロデュース(1995~96)などを歴任された人物です。

 南紀熊野博終了後も「まち歩き」を主体とした観光事業のプロデュースに活躍されており、「長崎さるく博(2004~2006)」や「大阪あそ歩(2008~)」などに関わられているようです。

chatani.upper.jp

 

 その茶谷氏の講演の中で紹介された絵本というのが、「地球というすてきな星(ジョン バーニンガム著、 長田弘訳、ほるぷ出版、1998)」という作品です。

 ジョン・バーニンガム(John Burningham 1936 - 2019)氏はイギリス出身の絵本作家で、同国のケイト・グリーナウェイ賞(英国図書館協会がその年にイギリスで出版された絵本のうち特に優れたものに対して贈呈する賞)を二度受賞したほか、ドイツ児童文学賞アメリカのペアレンツ・チョイス賞など、世界各地で高く評価されている作家だそうです。
絵本作家の横顔:ジョン・バーニンガム(John Burningham) - (絵本案内)オオカミと太陽

 「地球というすてきな星(原題"WHADAYAMEAN")」はバーニンガム氏が南紀熊野体験博のために新たに創作した物語で、その表紙に描かれた二人の子供(名前は公募の結果「ナン(女の子)」と「クー(男の子)」と決定されました)南紀熊野体験博のイメージキャラクターとなっています。

 この絵本のストーリーについては、「南紀熊野体験博公式ガイドブック」に次のように紹介されていますので、その部分を引用しておきます。

f:id:oishikogen_fumoto:20211201103307p:plain遠い昔、何百万年もかかって地球という星を創り上げた神様は、創り終えると疲れて何百万年も眠り込んでしまった。
ある日、神様は目を覚まし、地球を見て回ろうと思った。地球に降り立つと、大きな木の下で二人の子どもが遊んでいたので、神様子どもたちと一緒に旅に出た。
しかし、「魚や鳥など生き物のために作った水は汚されている。きれいだった空気は汚いガスで汚れている。植物や動物、小鳥たちのいくつかは絶滅している。私はそれらをもう二度と創ることはできないのに
神様は、「あなたたちがこの世界をもっともっと良くした時、再び来ます」と言って去った。
今度は、子どもたちだけで旅を続けた。そして水を汚し、空気を汚くしている人たちに会い、神様の代わりにみんなに言った。
地球を救うために水を汚すのは止めよう。空気を汚すのも止めよう。仲間争いをするのも止めよう。人を傷つけたりするのも止めよう
神様がそう言っている、と子どもたちから聞いた人々は、みんなその言葉に従った。そして世界はより良くなって・・・。
長い時が過ぎた。
神様は再び、子どもたちに世界の様子を見せてくれるよう頼んだ。「神様が僕たちに新しい世界を見せてくれと言ってるよ」。子どもたちは母親に言った。
母親は子どもたちに言った。「そう、神様に見せてあげたら。こんなに素敵な世界になりましたよって

※ション・バーニンガム氏制作のこのテーマストーリー概要は原文を直訳したあらすじで、絵本の文章とは異なります。

 

 1年前プレイベントでミュージカルの公演を行った「ミクル劇団」は、「ミクル・ミュージカルカンパニー」として現在も活動を続けています。同劇団Webサイトの「劇団概要」の項には次のように記載されており、もともとは「国際花と緑の博覧会(1990)」のために期間限定で立ち上げられた劇団だったものが、大好評だったために博覧会終了後も活動を継続するようになったのだそうです。

劇団概要
1990年「国際花と緑の博覧会(花の万博)」で誕生。
183日間、庭園型屋外パビリオン『ミクルのくに』にて連日ミュージカルを上演。
当初の動員予測200万人を大きく超え、300万人以上を動員し、
日本中に花と緑の大切さ(環境保全)と「心安らぐ人と自然とのいい関係」を大きく謳いあげました。
当初、花博終了をもって解散する予定のプロジェクトチームでしたが、関係各所からの強い存続要望によって、プロデビュー。
博覧会終了後も活動を継続する劇団として「日本で初めて」のケースです。
観客とのツーウェイコミュニケーションを図り、「汗ほとばしる熱演、そして、いろどり鮮やかな感動のミュージカルを!」の願いを込めて、“こころ熱い!感彩<KANSAI>ミュージカル”をテーマに2015年は25周年を迎えた。
オリジナル作品にこだわり続け、自主公演や高校芸術観賞公演、スポンサー公演など、年間公演数は実に100本に及ぶ。
また、設立当初から各都道府県の社会福祉協議会を通じて、福祉施設の子ども達への観劇招待を長年にわたって続けている。
「ミクル」は、「ミクロ」と「ミラクル」の造語で「小さな奇跡」という意味。

www.micle-musical.com