生石高原の麓から

和歌山の歴史・文化・伝承などを気ままに書き連ねています

和歌山県庁有志による「熊野古道リレー・ラン」(1999.3)

 「南紀熊野体験博の記録」のカテゴリーでは、過去の個人サイトに掲載していた記事のうち、「JAPAN EXPO 南紀熊野体験博(1999.4月~9月)」に関するものを再掲していきます。

 

 今回の記事は、南紀熊野体験博を盛り上げるために和歌山県庁の職員有志が行った「熊野古道リレー・ラン」の紹介です。

 これはあくまでも有志が自発的に行った活動であり、南紀熊野体験博実行委員会が関与した行事ではないのですが、私の友人たちが参加していたということもあり、関連イベントとして紹介しておきます。
 なお、元々の個人サイトではランナーの個人名を掲載していましたが、ここではイニシャルのみに留めさせていただきたいと思います。

 

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熊野古道リレー・ラン


 和歌山県庁には、ランニングを通じて自分の肉体をイジめることが無情の喜びと感じる「マニア(^_^)」によって構成される「県庁アスレチッククラブ(AC)」というクラブがあります。
 毎日ランニングを欠かさず、マラソンの参加者募集のポスターやパンフレットを見れば応募せずにはいられないという、ほとんど病的なまでに走ることに情熱をかけるACのメンバー達が、「南紀熊野体験博」のPRに一役買おうと、今回、和歌山県庁から熊野那智大社までの間、約210Kmをランニングでリレーするというイベント「熊野古道リレー・ラン」を企画しました。
 このイベントに私の友人が参加しましたので、私もカメラをかついでちょっとだけ取材(?)に行って参りました。以下はそのレポートです。

 

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 第三走者のFさんが第四走者への中継点(有田郡広川町井関)へ近づきます。 後ろから伴走しているメンバーが真剣な顔で携帯電話をかけているのは、情報の行き違いから次の走者のSさんがまだ中継点へ来ていないからなのです。

 

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  結局、第四走者のSさんは、第三走者とほぼ同時に中継点に到着したものの、ウォームアップもままならない状態であったため、とりあえず「臨時代走」として第九走者のKさんが走り始めました。

 

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  やっとウォーミングアップが完了して、Kさんからたすきを受け取り、伴走のバイクと共に走り始めるSさん。 ここからは熊野古道でも難所の一つである「鹿ケ瀬峠」越えの厳しいコースです。そんなにこやかな顔で大丈夫?

 

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 日高町の古道を駆けるSさん。 「鹿ケ瀬」の険しい道も難なくクリアし、想定タイムをかなり上回る軽快な走りを見せています。

 

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  無事、延長13Kmのルートを走破し、JR紀伊内原駅の中継点でクラブのメンバーに迎えられました。

 

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 たすきを受け取った第五走者のYさんが、御坊市塩屋の中継点に向かって約12Kmの道のりを走り始めました。

 

 当日は、時折小雨の降るあいにくの天気でしたが、ランナー達はみな実に楽しそうに走っていたのが印象的でした。この日(3月13日)のコースは中辺路町までで、翌日はまた本宮大社へ向けて走り始めることになっています。中辺路町の夜はさぞ盛り上がったことでしょう(^_^)

 

 

熊野古道リレー・ラン 行程表

第一日目(3月13日)
区  間 出発・中継点(目標)
 主要ルート
距  離
(道路種類)
1 和歌山県
 国道42号線
11.0Km
(一般道)
2 藤白王子(藤白神社
 地蔵峰寺、橘本神社
13.0Km
(山道、一般道)
3 宮原渡し(JR宮原駅
 糸我峠、湯浅町
11.0Km
(一般道)
4 広川町井関交差点
 鹿ケ瀬峠
13.0Km
(一般道、石畳)
5 内原王子(JR内原駅
 御坊市街、野口新橋
12.0Km
(一般道)
6 塩屋王子(御坊火力発電所入口)
 旧国道42号線
12.0Km
(一般道)
7 切目王子(JR切目駅
 旧国道42号線
12.0Km
(一般道)
8 三鍋王子(JR南部駅
 旧国道42号線、田辺市街、県道
9.0Km
(一般道)
9 闘鶏神社(JR田辺駅)
 田辺市街、県道
12.0Km
(一般道)
10 市ノ瀬橋(上富田町岩田)
 県道、国道311号線
10.0Km
(一般道)
11 滝尻王子(熊野古道館) 4.5Km
(山道)
 初日ゴール  高原神社(高原霧の里休憩所)
第二日目(3月14日)
1 高原神社(高原霧の里休憩所) 11.0Km
(山道)
2 近露王子(なかへち美術館)
 旧国道311号線
6.5Km
(一般道)
3 小広王子(旧国道311号線小広峠) 8.0Km
(山道)
4 三越峠(三越峠休憩所) 9.5Km
(林道)
5 熊野本宮大社
 国道168号線
17.0Km
(一般道)
6 熊野川町役場
 国道168号線
18.0Km
(一般道)
7 熊野速玉大社
 新宮市街、国道42号線
12.0Km
(一般道)
8 JR宇久井駅
 国道42号線
9.0Km
(一般道)
9 大門坂入口
南紀熊野体験博 本宮みたし茶屋)
1.0Km
(石段)
ゴール 熊野那智大社
全走行距離   211.5Km

 

※上記の記事は1999年3月に個人のWebサイトに掲載したものを再掲しました。

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 現在の感覚から見ると、「世界遺産」の熊野古道を大人数で訪れてランニングするというのはやや乱暴な印象を受けるのですが、この当時はまだ「熊野古道」というものがそれほど多くの人々に知られている状況になく、古道歩きをする人の数も増加しているとはいえ絶対数自体は決して多く無かったことから、少しでもそのルートの認知度をあげようと企画されたのが今回のイベントであったのです。

 

 かつては「蟻の熊野詣」と呼ばれるほど多くの人々が行き交った熊野古道ですが、自動車が交通の主役になったことによりこの道は利用者を失い、道そのものが忘れ去られてしまった場所も少なくありませんでした。

 それがやがていくつかの象徴的な出来事により再び脚光を浴びるようになり、現在では「世界遺産」として海外からも多くの観光客を集めるような場所となってきたのですが、こうした経緯については項を改めて少し詳しく紹介していきたいと思いますので次項をご覧ください。