生石高原の麓から

和歌山の歴史・文化・伝承などを気ままに書き連ねています

和泉式部の供養塔 ~本宮町(現田辺市本宮町)伏拝~

 なだらかな茶畑がひろがる丘陵地。その一段高いところに、伏拝(ふしおがみ)王子の祠。そして、かたわらには、笠塔婆の上に宝篋印塔の塔身とフタを積み上げた、一風変わった石碑もある。平安中期、熊野へ詣でた和泉式部の供養塔という。

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猪笹王(いざさおう) ~本宮町(現田辺市本宮町)湯峰~

 昔、このあたりの山野を、身の丈一丈(三メートル)もある怪物が、たたらを踏むようにしてかけ回ったという。一つ目で、口は耳まで裂けた、見るからに恐ろしい顔。しかも一本足。人々は、その足音を聞くと「一本だたらや」「猪笹王の亡霊だ」といって、ふるえたとも。

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鼻そげ地蔵 ~本宮町(現田辺市本宮町)湯峰~

 いわゆる「身代り地蔵」話のひとつ。温泉谷の尾根を登った峠に、自然石に刻んだ二体の地蔵があり、左甚五郎にからんだ話が、いまなお語りつがれている。

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一遍上人名号岩 ~本宮町(現田辺市本宮町)湯峰~

 「六字名号一遍法 十界依正一遍体 万行離念一遍証 人中上々妙好華

 峰温泉の道路わきにある「上人爪書きの遣跡」ともいわれる大岩には、こう刻まれていたというが、もうすっかり風化してしまい、いまは中央の「南無阿弥陀仏」の文字だけが、かすかに判読できる程度。

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湯峰と小粟判官 ~本宮町(現田辺市本宮町)湯峰~

 すっかり整備された国道311号線が、渡瀬のトンネルを過ぎると、とたんに九十九析れとなる。それを下りきったあたり、四村川の流れが、つかず離れずといった形で流れ下る。心なしか、湯の香が漂ってくる。そんな思いで握るハンドルは、軽い。

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瀞の主 ~熊野川町(現新宮市熊野川町)玉置ロ~

 は三重、奈良、和歌山の三県境を流れる。あるいは深くよどみ、あるいは急流が岩をかむ。この話は、そんな神秘さをただよわせる瀞にはいかにもふさわしい。

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円座石 ~熊野川町(現新宮市熊野川町)西~

 「大雲取越え」をすると、中根のあたりで道のわきに、大きな石が目にとまる。「円座石(わろうざいし)といい、別名「御茶具」「御沓形」とも。

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大雲取小雲取 ~熊野川町(現新宮市熊野川町)上長井~

 「伊勢へ七度、熊野へ三度」。かつて「蟻の熊野詣で」と形容された熊野三山詣では、まさに「神のこもれる国」への、素朴な信仰心がもたらしたものに他ならない。

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かいもんさんと変り者 ~熊野川町(現:新宮市熊野川町)日足~

 神丸の山手に、小さな祠がある。土地の人たちは、これを「かいもんさん」と呼ぶ。17世紀初頭、赤木からこのあたりまで、4キロにわたって赤木川の水を引き入れ、多くの新田をつくった太地嘉右衛門をまつるといい、毎年2月10日の例祭では、溝掃除をするのがならわしだ。

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